コロナ禍で浮き彫りになった「悠トピアらしさ」

今から約4年半前、いわゆるコロナ禍が始まりました。悠トピアは、家族会様の活動が活発で、ご家族の来園が多く、お子さんに会いに毎週来園されるご家族も数多くおられる施設です。また週末にかけて帰宅される方も多い施設なのですが、それが、突然のコロナ禍によって、施設は「安全確保のため完全閉鎖」となりました。利用者さんにとってはご家族に、ご家族にとっては思いもよらない「我が子、兄弟姉妹にまったく会えない日々が突然訪れた」わけです。

そこで悠トピアとしては、「週末、それぞれのご家族にスタッフから電話をして、お子さんの様子をお伝えする」ということを決めました。我が子に会えない寂しさ、悲しさ、そしてコロナ禍での不安を少しでも和らげてあげたい…と考えたからです。

施設をあげたコロナ感染防止対策を続ける日々の一方で、スタッフは毎週毎週手分けをしてご家族にお電話を差し上げました。「○○さんは、今週も元気で過ごせていますよ。」「週末は○○のプログラムをして楽しみました…。どうぞご安心ください。」このような報告を、完全閉鎖を解くまでの約3年あまりの間…毎週ずっと続けたのです。普段の業務、プラスコロナ禍での安全対策を続けながらです。

スタッフは、さぞかし大変だったでしょう。でも、報告のお電話を続けるうちに、スタッフから「電話する度に、ご家族から感謝の言葉を、そして励ましの言葉をいただいて…。私もとても嬉しくなりました。大変だけど頑張ります。」という言葉を聞く様になりました。一方で、私には何人ものご家族から電話がはいります。

「もう、スタッフからの毎週の電話が楽しみで…。」「このごろは電話でスタッフさんとの話をすることが、私たち親の気持ち、閉じられた暗い生活を逆に明るくしてくれているんだね…と話しています。」「ほんとうに有り難いことです」「悠トピアで支援してもらっていて、本当に良かったです」

世界中の人々が、そして日本人全員が、この先どうなるのか…、いつ自分もそして家族も陽性になってしまうのか…。誰もが不安で殺伐としたコロナ禍の毎日。そんな中、悠トピアのご家族にとって、離れて暮らす我が子、兄弟姉妹を思う気持ち、心配はいかばかりだったでしょうか…。そんな日々の中で、悠トピアでは「ご家族と離れているはずの利用者さんを真ん中にして、支援するスタッフの思いとご家族の思いが繋がって、お互いに感謝しあえる…」そんな時間が流れていたのです。

ちなみに、私(施設長)からは「コロナ禍における法人、施設の考え方をお伝えしてご家族に安心していただく」という思いで、コロナ禍が始まった2020年4月から今日まで「ご家族、後見人等の皆様へ」というお手紙を毎月お送りしてきました。振り返ってみると50通以上になっています。

現在は、「感染対策をお願いしながら」ですが、週末の希望面会、希望帰宅も再開されるようになっています。先日、帰宅のためにお迎えにこられたあるご家族から、あらためて「施設長からのお手紙によって法人、施設としての考え方やすすめ方が良くわかり、スタッフからは我が子の今、所属するユニットの状況の報告も細かく分かるので、コロナ禍であってもなんの心配もなく安心していられた。逆に私たち親も頑張ろう!って思っていました」という感謝のお言葉をいただきました。

実は、悠トピアでは、「利用者さんはもちろん、ご家族をも大切にして支え、寄り添う」という考え方とともに、「働いている職員も法人の宝であり、同様に大切にする」「より良い支援」のためには「スタッフが健康で、元気でなければならない」という、もう一つ大切な考え方をもっています。

コロナ禍で危険と隣り合わせて頑張ってきた職員のサポートとして、この3年間の年度末に感謝の思いを込めた手当として「慰労金」を用意してきました。もちろん支援員だけでなく総務部、看護師、栄養士、非常勤職員さんも含んだ全職員へです。

この様に、悠トピアは、支援員だけでなく、看護師、栄養士、総務部も含んだ全職員が「目の前におられる利用者さんはもちろん当然ですが、我が子、兄弟姉妹から離れて生活しておられるご家族をも大切にして、寄り添っていく…という姿勢、思い」をもって、日々の支援をすすめています。

「利用者さんはもちろん、ご家族をも大切にして支え、寄り添う」そして、「働く職員をも護り支える」という考え方。これこそが施設を開所して20年を超えて大切にしてきた「悠トピアらしさ」と考えています。

Text by 施設長 姉﨑則雅

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